声 明

 自民党・公明党・保守党の与党3党は、今年9月29日、少年法「改正」(案)を議員立法の形式で衆議院に提出した。

法案では、

1.刑事罰対象年齢の現行の「16歳以上」から「14歳以上」に引き下げる、
2.16歳以上で、殺人や強盗致死など「人の命を奪った行為」については、送致を受けた少年を家裁が「逆送」することを原則とする、
3.家裁の決定に不服がある場合、検察側に抗告受理の申立ができる制度を導入する、
などとなっている。

 自由法曹団は上記の少年法「改正」(案)に反対するものである。

 もともと少年法の原型というべきものは、およそ100年前にアメリカで制定されたものであり、大人と同じ刑罰法規を適用して犯罪を犯した少年を一生を社会の落伍者としての烙印を押してしまうことにより、結果として犯罪の増大という社会全体の不利益を招いたことへの反省から生まれたもので、この精神はひきつづき重要である。そのアメリカでは約20年前に重罰化転じ、選挙のたびごとに立候補者が競って重罰化を公約し、重罰化が加速した結果かえって少年において重大犯罪が激増している。日本では決してこの轍を踏んではならない。

 今回の「改正」(案)も結局は、少年が起こした犯罪の原因、背景、とられるべき対策等についての十分な情報がないまま、単純に重罰化すればよいという風潮に乗っかったものというほかなく、極めて危険である。ましてこうした基本理念に対する重大な変更について議員立法の形で、専門家の意見を聞く手続きも不十分のまま一気に成立させようとすることは将来に禍根を残すものであり、手続的疑問も払拭できない。現に、少年非行の防止について少年に対する重罰化だけでよいかどうかについては、マスコミでも良識ある専門家からの慎重な意見が紹介されており、これが市民の間に急速に広まりつつある。少年に対しては、処罰に頼るのではなく、家族、教育、地域社会などの総合的な体制の整備こそ早急に行うべきである。

 少年法「改正」(案)の個別の内容をそれぞれに大きな問題がある。

1.刑事罰対象年齢の引き下げには特に問題が大きい。年齢引き下げによって、14、15歳の少年は逆送される可能性が生じることになるが、思春期の個性の確立も不十分で社会の影響も受けやすく精神的動揺も激しい半面、教育的効果を特にあげやすい中学生での時期についてまで刑事処罰を科する制度にすることは全く有害であり、かつ、義務教育期間といういわば国家が教育する責任を負うべき対象に対しての責任を放棄するものというべきである。しかも、不定期刑を科された場合、処遇は16歳までは、少年院での教育的処遇(少年法「改正」骨子(案))、16歳以降は少年刑務所ということになる。そうなると、少年院での教育の目的は減殺され、かつ16歳以降が周囲の悪影響を強くうけるおそれがつとに指摘される少年刑務所での処遇では、少年の処遇についての一貫性もなく、効果について重大な疑問がある。

2.重大犯罪についての原則逆送の制度の導入についても重大な問題がある。これは、教育的処遇によってこそ、更生や再発防止に資するという理念を放棄するもので容認することは出来ない。岡山の金属バット事件や山口の母子殺害事件でも裁判所は少年を逆送せず、少年院送致の審判を行っている。裁判所の判断も当該少年は少年院の教育の中で立ち直りうるし、それが適切と判断しているのであり、少年院の教育の有効性を理解した上での判断といえるのである。応報感情を重視するあまり原則逆送の制度を導入することは少年に対する社会の責任の放棄である。

3.検察側に抗告受理申立権を与えるとしている点についても、検察官関与についての疑問があるばかりでなく、もっぱら刑事処遇を求める立場の検察官のさらなる関与を認めることになり、教育的処置を遅らせ、犯罪者の烙印を押し続けて少年の更生の可能性を低下させるものでしかない。しかも、検察官の判断を2週間以内に求めるものであるから、検察官に容易に判断がつくものを除き、安易な申立が増加することは当然であり、多くの事件について日々成長発達する少年の審判が長期化することによる弊害は計り知れないものがある。

 教育的処置というのは、決して少年を「甘やかす」ことではない。少年の過去、生育歴、環境にまで深く立ち入り、少年に真実反省を求め、将来の展望を持たせるよう厳しく促すものであり、少年にとっても、また教育する側にとっても極めて「厳しい」処置である。刑務所に入れておくという処置の方こそ安易である。未成熟な少年が犯した犯罪はいわば社会の鏡である。厳罰の名の下に刑務所に入れてこと足れりとし、少年に真実反省を求め更生を促すことを努力せず、そして、大人が少年に対する教育の義務を放棄するようなことがあってはならない。

 以上のとおり自由法曹団は、少年法「改正」(案)に反対するものである。
 上記声明する。

2000年10月7日

自 由 法 曹 団

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