少年法「改正」法案成立に対する全司法中央執行委員会「声明」


 今回の少年法「改正」法案をめぐっては、日弁連や自由法曹団など多くの法曹関係者や「検察官関与に反対する市民の会」などの市民団体、連合、全労連や全労協などのナショナルセンタ−の違いをこえた労働団体、そしてなにより広範は国民各層から「子どもの視点からの少年法論議を!」「21世紀を見据えて慎重な審議を」との声があがりました。今回の「改正」少年法の国会可決は、そうした声を一切無視し、政治的な日程に可決をあわせたものであって、到底容認できるものではありません。まさしく21世紀直前においての最大の愚挙のひとつとして記憶されるものであると考えます。

 「改正」少年法は、刑事罰適用年齢の14歳への引下げ、故意に被害者を死亡させた場合に原則として検察官送致を行う「原則検送」制度(例外規定あり)の導入など、少年法の健全育成の理念を投げ捨てるとともに、保護主義の基本である個別処遇の原則をも放棄するものです。また「山形マット死事件」などで最大の問題となった「事実認定」については、成人事件では当然認められている「証拠法則」の導入がないまま、検察官を審判の「協力者」として参加させるなど、「適正な裁判を受ける権利」を定めた日本国憲法の規定にも抵触しかねないものであり少年事件の冤罪をむしろ助長しかねない内容となっています。これは「山形マット死事件」で鋭くつきつけられた論点を曖昧なまま誤魔化すものといえます。

 こうした致命的な欠陥をもった「改正」少年法の最大の問題点は「改正」論議が、今日の少年事件の全体がどのようになっているのかというきちんとした分析が行われず、また「凶悪事件」とされた個々の事件の正確な事実関係などの認識を欠いたまま、いたずらにマス・メディアの一部が煽り立てた「激増し、凶悪化する少年事件」のイメ−ジのみによって論議が行われたということです。これはわが国の少年司法や刑事司法にとって不幸な出来事といえます。法律や制度を考える場合、現実の社会で発生している正確な事実の把握や分析を行うことは常識の範疇の属するものであって、今回のように「イメ−ジ」を先行させ、政治的配慮を優先して法律や制度を改正することは、法律や制度を考えうるもののすることではありません。また論議の過程では、少年法そのものへの正確な知識のないままに、自分勝手に作り上げた少年法「イメ−ジ」を振り回すような議論も散見されました。法律や制度を考える者として恥ずべきことと言わざるをえません。

 また、少年法論議の重要な論点と言うべき犯罪被害者救済の問題では、一定の改善はありましたが修復的司法の導入問題など、根本的な解決には程遠い内容になっています。「改正」少年法には、犯罪被害者からも批判が相次いでおり、犯罪被害者救済を考える論議や試みをも「改正」少年法は封殺しています。

 「改正」少年法は、一部の特異な事件をことさらに少年犯罪全体の特徴であるかのように描きだし、今日の少年犯罪の原因がどこにあるのかという根本的な問い掛けに答えていません。「子どもは社会の鑑」だという言葉があるように、今回の少年法論議はわたしたち大人社会を含めた論議が必要であったといえます。与野党は5年後を目処に再度論議を再開させることを「改正」少年法に明記していますが、少年法改正論議の本当の論点は何だったのか、そしてわたしたちは何をしなければならなかったのかを今後も真剣に考えつづけること求めるものです。

2000年11月28日

全司法労働組合中央執行委員会


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